炭坑記録画の数々
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増産奨励懸賞品の抽選(位登炭坑)
昭和33~38年頃

 昭和十八年八月廿九日、日曜晴、残暑は去らず暑さ灼が如しの日であったが、位登炭鉱だけは余り暑くなかった。それは楽天日であったからで、お天気など思惑に入れていなかったのである。戦時下の盆休後、採炭掘進に増産奨励の懸賞品の抽籤日であった。従来も毎年四、五回位懸賞奨励はあるが、現金制度で物品をかけたのは今回が初めてであり、ヤマ全員が資格者になる程の励み方であったから当日はトテモ賑おうた(当時の労務係長は梶原氏で、相当の人格者であった)。当日、田川警察署長の時局講演もあった。
 タンス一棹、戸棚二個、机二ヶ、其他鍵櫃、タライ、ヒメ鏡台二ヶ、雨傘数本、バケツ数ヶ、衣カケ数ヶ、種々の家具類が事務所前に商店の如く飾られ、やがて午前十時頃鬮びきが始まると、我こそ一等の箪笥をひきあてんものをと、手、手、手、拇指と人差指の大活躍が展開した。又、当日坑内夫に三合、坑外夫に二合の特配酒も出て一層朗らかさを昂揚させた。
 蛇足
 当夜、右の酒を飲んだあげく一等仕繰夫の松山長七が、同僚の日地(肱)某ニ出刃包丁で殺された。坑夫の殺人事件は位登坑では初めてであった。

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