炭坑記録画の数々
ヤマの訪問者

陶器売り
昭和40年12月

 ヤマの訪問者、陶器の悪口売り。「ホーラ、茶碗がトンオで四十銭だ。町で買ったら一つ十銭でも売らねーぞ。博覧会なら一円だ。チャンチャン、そうだ、この音を聞け。貧乏人の子は茶碗の音で目を覚ます。ハァー、わかった。大方家族で一つの茶碗を回し食いしているのじゃないだろうな。沢庵(コンコン)なら手づかみでいいが、お粥を手づかみすると火傷するぞ。
茶碗五つ買うなら、半分の四十銭だ。これは意気地なしの親父の分、これはしみったれのカカァの分、これはスネかじりの息子の分、これはヌスットあま(万引き女)の分、これは鼻たれ小僧の分、とキチンと(五つの茶碗の持ち主を)決めておけ」
この陶器のせり売りは、明治二十年頃から始まったというが、お客は悪口言われても、喜んで買っていた。
「さあさ、茶碗を買ったお客さんには、早速夫婦喧嘩をして、うんと割ってもらわにゃならん」



※トンオ  まとめ買いのことと思われる。

<<前の記録画  次の記録画>>

<<前の10件 1112131415|16|17181920| 次の10件>>

16/25