炭坑記録画の数々
運搬(坑内)

スラの積載量150キロ位
昭和40年1月

 明治中期の低層炭は、カネカタも(天井が)低いので、スラ棚はできない。昇り切羽の入口を盤打ちして広め、そこに一時カブダシ(溜炭)し、函(炭車)が一函または数函になると、捲立から炭函を押し込んで(石炭を)積む。エブ、ガンヅメですくい込む。
 スラは傾斜(バンガヤリ)12、3度ぐらいになると、(スラを)前向きに引けば危険。よって、後ろ向きになって、カルイを尻にまわして(スラを)引き、手でかじをとる。
 (スラの石炭積載量が)百五十㌔ぐらいでは、コロはなるべく敷かない。金がかかるからである。

 麻生系のヤマは塊炭(かいたん)で、函の淵に立ちぐれして、山盛りにして石炭を積んでいた。それをしないのは、二割の減量をされた。函は(石炭をエブで)二十四杯、ヤマによっては二十八杯積んだ。

~女ながらも滝夜叉姫は 七十五力(りき)蟇(ガマ)の術 ゴットン



※カネカタ  曲片。捲卸(まきおろし)から片盤の方向に、一定の間隔をおいて掘進(くっしん)する主要坑道。
※スラ棚   スラに積んだ石炭を直接炭車へ積み込めるように、炭車の高さに合わせてつくられた厚板張の棚。
※盤打ち   車道や坑道の通りをよくするため、下盤(石炭層を挟む岩石層の下部分)を掘り下げること。
※カブダシ  坑内に石炭を一時溜めておくこと。
※捲立    捲卸から片盤曲片への入口で、空函を実函に連結しかえて捲き上げる場所。
※エブ    エビジョウケ、エビ。石炭をすくい込むときに使う竹籠の方言。
※ガンヅメ  雁爪。四つ又の爪で石炭を掻き寄せる道具。
※スラ    籠や木箱にソリ状の台がついたもの。
※カルイ   石炭を運ぶ木箱に使用する引綱。
※コロ    運搬するために底に敷く丸太。
※立ちぐれ  増量のための板を立てること。
※女ながらも… 平将門の娘という滝夜叉姫が、ガマの妖術を使ったという説話。

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