炭坑記録画の数々
運搬(坑内)

函なぐれ
昭和39~42年頃

 明治、大正、昭和のハコ(炭車)ナグレ、ハコマチ。筑豊のヤマで月産三千トン(昔は「斤」という重さの単位を用いた)以上出炭する所で、ハコナグレしないヤマは珍しいぐらいであった。(二人一組で六函、約三トンの石炭を積むために、十六時間以上待たされた)
 マキタテが多くなり、卸し下がりが多くなるにつけ、ナグレが激しくなっていた。カブダシは数函分しているが、カラバコ(空函)が何時間も来ないので、坑内に十六時間以上いることは実に苦しかった。まして、切羽(採掘現場)で働けば汗は出るが、マキタテ、ハコマチを長くすると寒くなる。
 初めの内は大勢おるから、面白い漫談や世間話がとび出すが、後にはアクビと背のびばかりになる。もっとも、子供のおる後山は昇坑して、亭主先山だけ残る人もおった。
 坑内での雑談は、バクチ、ケンカが多く、次はトンチのよい人がおると中々賑わう。中でも恋愛問題に一番花が咲く。

 毎日毎日、こんなに遅くなっちゃ、やりきれぬの~




※ナグレ   炭車がまわされないので、仕事ができないこと。
※マキタテ  捲立。捲卸から片盤曲片への入口で、空函を実函に連結しかえて捲き上げる場所。
※卸し下がり 炭層の傾斜に沿って下る方向。
※カブダシ  坑内に石炭を一時溜めておくこと。

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