捲立
昭和40年1月
明治中期のマキタテ。本線捲卸より左右の水平坑道(カネカタ、片盤)の入口で炭函を差し込むところ。(傾斜の)上部で空函のピンを切り(抜く)と、ある程度自走する。(石炭を積んだ)実函は、後ろから押しかけるようにしてある。
小ヤマは単線の捲立が多い。(複線は幅が広いため)経費もかかり天井も永くもてないからである。この場合、ムカイ函は(単線は詰まるので)放されない。
中以上のヤマには坑内棹取(さおどり)がおって、各所に配函を按分し、次の捲立の信号もする。実函を捲き揚げる入口の曲がりを「舟底」といい、(このような形にするには)坑内大工の技術がいる。
本線からの一本剣は(支線レール)、1・3/4“(約44mm)の角鉄を使うヤマが多い。(角鉄ではない)レールは、自動的に先が割れるからである。剣割(レールが割れた)脱線は、大事故を起こすからである。
坑内棹取のいないヤマの乗廻しは、とても多忙である。実函の規定函を調べ(ボタ函は石炭の一函半に相当する)、一本剣も蹴って捲函に飛び乗らないといけないので、コース元に(再び)乗ることはできない。
大手ヤマは一本剣を交差しているところもある。日鉄など。
※マキタテ 捲立。捲卸から片盤曲片への入口で、空函を実函に連結しかえて捲き上げる場所。
※捲卸 炭車の捲差しをして石炭を搬出する、主要運搬卸坑道。
※カネカタ、片盤 曲片、片磐。炭層の傾斜する方向と直角で、傾斜のない方向。
※ムカイ函 迎い函。曲片で炭車が過剰になった場合、コース(炭車連結具)に若干の実函をつけて差込み、曲片の実函を迎い取って車数を減じること。
※棹取 運搬夫。
※一本剣 車道の分岐点に使用する、先の尖った角鉄の手動ポイント。
※規定函 重量や捲揚機の馬力などによって決まる、安全に捲揚げられる実函の数。
※捲函 坑内から捲き揚げる石炭を積んだ炭車。
※コース 炭車を連結する金具。
<<前の10件 21|22|23|24|25|26|27|28|29|30| 次の10件>>
21/34